テフテフからの報告と武器の説明にマーバロンもチョンも驚愕した。「そんなに凄いのか二人とも。」「凄いなんてもんじゃありません!アンドロイドの私が、勝てなかったんですよ。武器が武器なら負けてたかもしれないんですよ。けっこうショックなんですけど・・」「だけど、頼もしいな2人の成長ぶりは。しかし、俺はそんな方向に成長するとは思っていなかった。交渉術やプレゼンが伸びると思っていたんだがなぁ。」「そっちはこれからですよ、これから。」チョンが「所でな、その武器なんだが、エンビではそんな代物は作れない。キャプテンとも相談したんだが、今そっちに向かっている。それまで待ってくれないか?」「ええっ、そしたら私たちじゃなくてキャプテンが交渉するんでしょ、それじゃあ、せっかく勉強に出してもらったのに、なんにもならないじゃ無いですか。」「いやいや、テフテフ待ってくれ、約束する俺は交渉には手を出さない。3人で交渉に当たってくれ。」「だけど、武器は仕込まなければならないアルヨ。待ってくれれば最高の物を渡すから。」「わかりました。何処で待ち合わせしましょう?」「トロンの手前にジャガタラと言う星がある。そこは宗教の盛んな星だが貧しい。これと言った産業がないんだけど、マーミスと言う着陸場がある、そこで待ってくれ。」
ABドライブを繰り返しジャガタラにもうすぐ到着する。ドライブ中、ブレイクルームの睡眠ハッチに入るのは生身の者だけだが、アンドロイドはそれには該当しない、メインAIのマザーとナンシーは互いにやり取りしながら事を進める。チョンが概要とサイズ他様々な事を考慮してマザーに進言して、到着までにデルキャンプとタケチヨの武器の設計を行い、マザーが修正を加えて工業用のドロイドとナンシーが制作に携わった。睡眠ハッチから出てきたマーバロンはコントロールルームに急いだ。「マザー、あとどれくらいでジャガタラに着く?」「6ジカンホドデショウカ」「ナンシーは?」「エンジニアスペースデセイサクチュウデス」「ありがとう」エンジニアスペースに歩き出すと、チョンとフラワー、ピルモも出てきた。「ナンシーはエンジニアスペースに籠っているらしい。」「ちょっと、デリケートに設計したから、難しかったかな?緻密な作業の繰り返しになるから苦戦してるアルカナ?」「ナンシーは大丈夫よ。アンドロイドに言うにはおかしな話だけど、あの星(ミラパール)に一人、誰もいなくても黙々と作業をこなしてきたのよ。あたしたち生物じゃあ、こうはいかないわよ。いくら命令されてるからと言っても自分で考えることもできるのよ。ミラパールのどこにも汚れや綻び、傷ひとつすらないのよ。きっといいものが出来上がっているわよ。」「フラワーの言う通りだよ、チョンの設計通りに出来てるよ、大丈夫。」それを聞いていたピルモの「だい”ど”うぶ」に皆、笑顔になった。
エンジニアスペースの扉を開けると、まばゆい光に驚いた。「シューッ」と言う音と共に光る剣が飛び出した。振り向いたナンシーは笑顔で「おはようございます皆さま」と告げたあと、おもむろに「できました。デルキャンプ様の剣と、タケチヨ様の剣が。」「ナンシー、具体的にどんなものか説明してくれ。」「はい、マーバロン様、先ずデルキャンプ様の剣ですが、一つの剣が二つに分離するだけなのでそれ自体は難しくありませんでした。しかし一本が二本になると強度が落ちます。マザーと相談の上、複数のレーザー光の組み合わせで強度も可能となりました。次にタケチヨ様の物ですが、こちらは硬度と軽量化の他、テレパシーコントロールという事で難航しましたが、マーバロン様がブレイクルームでお休みになる前に、こちらにある材料はどんなものも使ってよいと仰られたので、あれを使いました。「あれ?」「サイキックストーンです。あれを拝借することで、レーザー光の剣を曲げる、伸ばすが可能となりました。まあ、伸ばすと言っても18センチです。しかし、18センチ伸ばして刺されば、致命傷になるでしょう。同じように強度の変化も可能になりました。タケチヨ様がここだ!と思った瞬間硬くできます。普段は
フェンシングのフルーレのように柔らかく、しなりのある剣でございます。ただ、タケチヨ様の剣は今、お試しになることが出来ません。それはタケチヨ様ご本人がサイキックストーンに念押しをいただかなければ効力を発揮できません。と言う訳でタケチヨ様にお会いになってからお確かめください。」「想像以上に変化した剣になったアルナ。しかし、面白い所に発見があったのだな、サイキックストーンをそんな風に使うとは‥」「チョン・チャン・チュン様、ご存じかと思いますが、このサイキックストーンはアンドロイドでは実験すらできません。私もマザーもこれに関しては手も足も出ません。生身の生物のように水分がないと念押しできませんし、タケチヨ様のための剣ですので、他の方が念押ししてしまうとその方にしか使えなくなります。それからデルキャンプ様の剣も腕が6本もあるメンバーがいらっしゃらないので、こちらもご本人でなければ使い勝手すらわかりません。」「ナンシーありがとう。あの石がボールザイオンのメンバーのために活用された事は素直に嬉しいよ。サイキックストーンをどう活用するのが一番いいのか分からなかったんだ。あれは師匠のサイゾウの持ち物だった。サイゾウもその特性に関しては知っていたらしく、素手で触る事はしなかったし、話には聞いていたけど。念を込めて何ができるのか想像もつかなかった。素晴らしい活用法だ」「ねえ。・・・ダーリンのその右腕のサイコガンは多分そのサイキックストーンを使ってできてるんじゃない?」「・・・そうか。そうだったのか!どうして今までそれに気づかなかったんだろう、確かにそうだ。あの時サイゾウが・・・」「ダーリンのその話、あたしたちにも聞かせて・・・」「でしたら皆さま、そろそろ食事の時間ですので食べながらのご歓談にしませんか?」「それじゃあ飯食いながら聞いてもらうかな。」
「俺が奴隷だったという話はしたよな。」・・・5歳くらいになっていたと思う。俺はどこかの星の奴隷市場で売られていた。いろんな星の奴らが俺を品定めしていたが、やせっぽちの俺は見向きもされなかった。テラ型の男がじっと俺を見ていた、話がついておれはその男の奴隷になった。宇宙船に乗り込むと足かせを外され、コックピットのジャンプシートに座らされ、その男は自分の事をサイゾウと名乗った。サイゾウは今日からそこがお前の席だと言い、お前は自由になったと俺に告げた。だが、お前には生きる術がないからその術をおれが教えてやると言った。それこそサイゾウは俺に全てを教えた。船の操船、宇宙海図の見かたに始まり、あらゆる鉱石の種類、その価値、見つけ方、含有量の予測など山師に必要な事の全てを教えてくれた。広い宇宙を旅して鉱石を見つけ掘り出し売った。多分18歳くらいになったんだと思う。背が伸びなくなって、テラ型のヒューマンの成長のピークに達したとき、ある星に連れていかれてサイゾウがその男に懇願して何かの話がついた。俺にはそれが何かは分からなかったが、サイゾウはただ、我慢しろと言い、俺はベッドに横たわった。目覚めたとき右腕に激痛が走り、俺はわめいていた。しばらくして痛みが引いた時、もう一度その星の男に会った。男は、その右腕に仕込んだのはサイコガンだと言い、念を込めて打てばどんな相手も打ち抜けると言った。訓練場に連れていかれ、放たれた野生獣と対峙することになった。まったく戦闘経験のない俺は恐怖に怯えて一歩も動けなかった。野生獣は涎を垂らし襲い掛かってきた。恐怖におびえながら右手を前に出して叫んだ。右手がガンに変化して、緑色の光が銃口から飛び出した。狙いを定めるでもなかったが、その光は弧を描き全ての獣に命中した。俺は倒れ込んで気絶した。目が覚めると星の男のベッドだった。飯を食えと言われ、掻き呑んだでいると、サイコガンは精神エネルギー波を打ち出していると言われた。標的さえ決まっていれば後ろを向いて打っても当たると言われたが、エネルギー量は一人一人違うから、精神を鍛えるとともに、集中する事だと簡単に言われた。その星を離れると、お前がやれと言われサイゾウは先頭に立たなくなった。見ず知らずの星をめぐり山も森も湖の底も砂漠もケイ酸塩の降り注ぐ台地も先に立って鉱石を探した。いくつかの星では獣に出くわしサイコガンを打った。いつも冷静でなければならず、集中力も切らしてはならなかった。そのうちサイゾウはついてくることは無くなり、一人でココと思われるところで試し掘りを行った。数年がたつ頃には10分以上連射して戦う事もできるようになり、交渉や売買の場にもサイゾウは来なくなった。そんな時、サイゾウは胸を患い、もう長くはないと悟っていた。何を思ったのか、新しい船を買い、小さいが建造された人工の星を買い取り彼の地に運んだ、一体のアンドロイドと共に。サイゾウはその最後に星も船もすべてはおまえの財産だと言ってあのサイキックストーンを託して亡くなった。「これが俺のサイコガンとサイキックストーンにまつわる話で、サイゾウが買った船がブラックバードで星がミラパールで、アンドロイドはナンシーだ。」「ダーリン、そうなるとタケチヨは大丈夫なの?精神を鍛えるとともに集中力が必要なんでしょ。」「大丈夫だよ、あいつは誰がどう見ても”うすら馬鹿”にしか見えない!それは断言できる。がしかし、あいつの本当の正体は、惑星ピスのマダラオ公国第七皇子なんだぜ!知ってたか?」「ええっ!皇子?いつも口の横からベロが垂れ下がって料理とボンヤリする事しか取り柄の無い、ゴフ、ゴフ言ってるタケチヨが?」「ああ、間違いない。ここだけの話、一通りの剣術や化学、医学、それに王族としての帝王学も身にいつけている。そこで今回のダイヤの売買に同席させたんだ、知識だけならテフテフには敵わないだろうが、しかし帝王学とは原則がある。まず、その原則を教えてくれる師を持つこと、それから物事を成り立たせる根本的な理屈、基本的な規則など、人から指摘されるのが嫌な事も言ってくれるような部下を持つこと、中立的な立場で助言や専門知識を提供してくれるアドバイザーを持つことなどを幼少の頃から義務づけられているんだ。まあ、剣術はおまけみたいなもんだが、時短の部屋で幼いころからの剣術の鍛錬が目覚めたのだろう。精神の強化と集中力は皆に隠しているだけで、ずば抜けていると言ってもいい。」その話に皆一様にポカンとしているが。ナンシーが「間も無くジャガタラのマーミスに着陸します、皆様、ひとまずコントロールルームへ」と促された。
