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昔、大蓮華山と呼ばれた山へ 前編

  1. 春夏秋冬
2026/07/17

青空の下、瑞々しい緑と残雪の白のコントラストが美しい。昨夜遅くに蓮華温泉の駐車場に着いたが、土砂降りの雨と、真っ暗で不気味な森を縫うように、ここにたどり着いた。駐車場には軽トラと他に1台車があるだけで閑散としている。適当に夕食を済ませ、ビールを煽ってフロントガラスを叩く雨を眺めながら、朝までに止まなければ帰るしかないな、とボンヤリと考えている。もうやる事は何もない。今夜は車中泊だから用意しておいた寝袋に潜り込んで横になった。横になっても眠りの気配はない。車を叩く雨の音が響き渡るだけの狭い車内で芋虫のようにゴロゴロするが、待てど暮らせど眠りは来ない・・・もう深い眠りは諦めた。それでも何度かうつらうつらと夢の中へ誘われたが目覚めるたびに、まだ雨か、まだ降っているのかと体をくねらせた。エンジン音に目が覚めて、ヘッドライトが一瞬車内を照らす。登山者が来たようだ。薄明るくなり始めた空は乳白色で、辺りも霧なのかよく見えないが、雨はやんでいる。時計を見ると4時半なので、、もう少しそのままでいる。しばらくして、もう一台車がきた音に、もう眠る事は出来ないだろうと観念して寝袋を這い出た。霧は出ているが晴れるようだ。起きだして、やはり簡単な朝食を取り、身支度を整えてみたが、まだ出発するには早いと思いグズグズしていた。だが、それが何だと思い直し出発した。

分け入ると、草木は濡れ、登山道の一部は昨夜の雨で川となっているが、空は晴れ空気の密度は濃い。しかし、寝不足なのか軽い頭痛がする。頭痛持ちではない私が頭が痛いという事は、調子が悪いという事だ。濡れたデコボコ道が続き歩きにくい。白馬大池まで3時間を要した。ここまでは良い休憩場所が無い。唯一、天狗の庭が開けていたくらいだ。

   

樹林帯を突き抜けると、ぐるりと丘に囲まれた、白馬大池への開けた道に出た。白馬大池山荘の前にベンチがあり、少し長めの休憩をとった。周りにはたくさんの高山植物が咲き乱れ今が盛りだ。ハクサンイチゲ?コマクサ、コバイケイソウ、ツガザクラ、サクラソウ、などが可愛い花を咲かせている。

 

 

 

 

さあ、もうひと踏ん張りしようとリュックを担ぐが重い。一泊の山小屋どまりだが、単独登山は何かあってはと思うと荷が重くなる。いつもは持たないツエルトや多めの水、行き帰りの行動食や着替えやら、防寒着などを詰め込むと重い事この上ないが仕方がない。気を取り直して歩みを進める。船越の頭までに雷鳥の親子が姿を見せてくれた。

     

体躯のいい立派なお母さんと、丸くて可愛いヒヨコが急登にあえぐ私を和ませてくれた。雷鳥たちに別れを告げてさらに進むが、ハイマツの間を縫うようにガレた道が畝り、霧の向こうに続いている。

 

やっと船越の頭に着いたが見上げれば、まだ絶望的に長い。ここからまだ1時間以上登っても小蓮華山に着くだけだ。その間、何とか私を励ましてくれたのは、やはり岩間に咲く草花たちだった。ウルップソウやコバイケイソウ、ウスユキソウなどの植物が喘ぐ私を癒してくれた。残念ながら、クロユリは大きなつぼみを着けていたが4,5日早かった。

    

小蓮華山(2766m)の頂上で私を迎えてくれたのはクジャク蝶だった。高いところに来ていつも思うのは2500mを超える山にも虫たちが暮らしているという事だ。

他のタテハ蝶や蠅もトンボもいる。この日は暖かかったが、それでも最高気温は17度だ。彼らは石の上に止まり羽を広げ体温をあげている。縄張りを守り、パートナーを見つけ子孫を残す。この過酷な環境で酸素の薄さをものともせず、わたしのように喘ぎもせず、そういう植物や蝶の撮影は良い休憩になった。

     

頂上は遠かったが、ようやく辿り着いた。2932m。写真にはないが、白い石のモニュメントは新田次郎書の強力伝によるモデルにもなった180kgの石の記念碑だそうだ。ここから赤屋根の白馬山荘が眼下に見える。とにかくチェックインして休むことにする。荷物を下してレストハウスでコーヒーを飲む。いつもならビール、ビールってとこだが、いかんせん体調がイマイチだ。途中の昼食もなかなか飲み下せず、まともに食べられなかったので、大事を取ってゆっくりと過ごす。店内にはレゲエの神様、ボブ・マーリーの曲が流れ、独特のリズムが労ってくれた。早めについてゆっくりできたのは幸いだった。窓の外の景色は霧が沸いて、途切れ途切れに見えるだけだが、杓子岳へ続く稜線の道が僅かに見える。計画では明日は早朝に杓子岳、鑓ヶ岳を落として、来た道を往復する予定だったが、体調を考慮して明日はこのまま蓮華温泉に戻ることにいする。杓子と鑓は宿題として取っておくことにする。

後編に続く・・・