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南へ

2024/12/11

 

痛いほどの風が頬を刺す、以前はテニスコートと思われる駐車場も車はまばらだ。ニットの帽子か、バケットハットにするか、迷ったが、見上げた空は青く澄み渡っているので、バケットにする。温泉街を通り過ぎたその先に登山口と駐車場がある。ロープウェイはまだ動いていないようだ。

紅葉谷を登り始めるが、谷筋は気温が2度と、より寒い。しばらく進むと少しづつ体がほてって、気温が相殺され、寒さを感じなくなる。さらさらと流れる、小川は澄み切って水音が心地いい。谷に入れば風もなく、ただ静かな中に落ち葉を踏む靴音だけが耳に届く。

この山塊は広く、登山道も無数にある、西からも、東からも北、南と山ほど(山だけに)ルートがある。今日はベテラン同行者と一緒だから、コースはお任せしてある。

もみじ谷というだけあって無数のもみじの葉が足元を埋めている。3週間前なら完全な見頃であっただろうが、今は葉が落ちて枝だけになったその向こうに、空の青さだけが際立つ。関西屈指のこの山はとても人気があるようで、頂上とロープウェイの間の舗装路の出会いに詰めると、登山者のみならず、観光客やカメラを構えた人が行きかう。頂上やロープウェイにも車で行けるので便利なことこの上ない!平日にもかかわらず大勢の人でにぎわっているようだ。

頂上からは海が見えて、遠くは大阪の向こうも望める。冬空の太陽は南に傾き、逆光の海はぼんやりと白く、足元の街や、海沿いの建物も、淡くかすんで見える。アンテナしかない頂上は、その傾いた太陽に照らされ、食事をするには何だか面白みに欠けているので、すぐそばの、出来たばかりの休憩所(一見茶屋)に降りた。障碍者用のトイレも併設されたその施設はこれからまだ建物が建つのか、工事中

でもある。京都北部に住んでいると、冬場は時雨れて雨や雪が多くなる。山登りを再開した3年前は、天気が悪いと登れないことがストレスでイライラしていたが、天気予報を見ていると南部は晴れの天気だと気づき、南の山に出かけるようになった。神戸から岡山にかけての南部は太平洋気候に恵まれ、いつも晴れている。そうして南部の山に登ると、北部にはない岩山が多くあることに面白さを見つけた。播磨アルプス、小野アルプス、加西アルプスなど、アルプスの名を付けた岩山がたくさんある。高さは300m~500m程度の低山だが、山頂からは海や町が望める。明石海峡大橋や淡路島、四国までがはっきりと見える。岡山の海沿いの山からは、抹茶カキ氷のような島々が瀬戸内海にぽっかりと浮かんでいるのが眺められる(かわいい)。辛いのは、雪こそ降らないが、乾いた寒風が吹き下ろすことだ。が、登山口近くに温泉施設もある。冷えた体には最高のおもてなしになる。

さて、話を山行に戻すが、昼食後、魚屋路(ととやみち)を通り(昔は神戸から有馬へ山頂を通って有馬へ魚を届けたことから、その名がついたそう)、瑞宝寺公園へ下山を開始した。悪路というほどの道ではなく、多くの登山者が歩いているせいか、しっかりした道である。沢山の砂防ダムがあり、流れ落ちる水は透き通り、美しい淵は底の岩まで見えるほどきれいだ。温泉街まで降り立ち、ふと見ると、炭酸せんべいの看板が目に入った。うーむっ!不思議だ。炭酸せんべいとはそんなに美味いのか?なぜ炭酸なのだ?とこぼしていると、同行者がてんぷらや、ホットケーキも炭酸で粉を溶くと膨らむから、フワ、サクで美味いんじゃないかと教えてくれた。確かに炭酸せんべいの名は来たことがあるが、そんな作戦があったとは露ほどにも思わなかった。恐るべし!今度食ってみるか。

これから、本格的な冬を迎える。寒いことに変わりはないが、申し上げた通り南部は晴れ間が多いので、姫路や岡山界隈の山に当たりをつけて登ろうかと思う。冬の柔らかな日差しの中で海や島々を眺めるのはまた格別。皆さんも北部に見切りをつけて、太平洋や瀬戸内の低山に登ってみてはいかがだろう。後悔させない景色がそこにあります。