濃密な香りが漂っている。甘く、安らぐような香りに包まれている。金木犀が満開になって鼻をくすぐる。今年は花が多くついているような気がする。梅の葉はほとんどが散ってしまい、あと1枚を残すだけになった。他の植木も茶色くなり、夏には盛りだった、猫じゃらしも、すっかり、枯れ色になり風に揺れている。1000mほどの山も頂上付近は紅葉し始めて、山道脇のリンドウは今が盛りのようだ。山の蝶たちはパートナーを求めて活発に飛び回り、フンコロガシは動きが鈍い。
秋は、命が枯れていくような、微妙な気分になる。青かった木々は色付き、やがて葉を落とし休眠する準備をするようだし。ツバメは数百羽の群れを成し、南へ帰る支度をしているようだ。これから咲く花は、わずかだろうし、虫たちも倒れていくだろう。
だが、空は高く、柿の落ち葉がカラカラと乾いた音を引いて舞う。空気は乾いているが、日没は早い、もどかしい季節。春とは違い、ワクワクする高揚感もなければ、期待に胸を膨らませることもない。ただ、風に身を任せているような、頼りない季節の中にいる。
草莽枯れ行く中、種をまき命をつなぐ植物や生き物に見習おう、懸命に生きよう。そう、叱咤する今日この頃!