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・・・ちまった悲しみに

  1. 春夏秋冬
2024/08/29

撤退してしまった!

台風は、まだ遠い南海上にあるので、相も変わらず山に出かけた。今日は12キロのロングコースを走破する予定だ。現地までの車中、時折雨がパラつき、晴れたり曇ったりクルクル天気が変わる。

どうやら、昨日もこの山には雨は降っておらず、下草は濡れていない。いい山行になればいいが、と思いながら登山靴のひもを締める。つくつくぼうしが、行く夏を惜しむようにあちこちで合唱している。

登り始めてしばらく行くと稜線に抜け、山肌を風が洗い、汗を吹き飛ばしてくれる。伸び始めたススキの若い穂が、波打つように揺れている。

硬かった筋肉もだんだんほぐれ、歩行速度もあがってくるのがわかる。いくつかのアップダウンを経て、大平頭避難小屋に着くのに50分ほど。まずまずのペースかな?途中、何度か水分補給したが、ここで腰かけて小休止。行動食とクエン酸のゼリーでリフレッシュする。

赤倉山を越えるころには目的の氷ノ山が見えてきた。がしかし、頂上はガスにまかれている。歩く道すがら頂上小屋が見えたり隠れたりしていたが、雲行きは相当怪しい。さらに歩みを伸ばして氷ノ山越避難小屋で2度目の小休止。下山してきた登山者と頂上付近の天候を情報交換。「頂上はどうでした?」、「僕が上にいるときはガスってまして、何も見えませんでしたし、雨がぱらついていました。天気は持ちそうだと思います」と話してくれた。その時、すでにかなりの強風が吹き荒れていた、この山域の上空には台風の影響か、東からの湿った雲が押し寄せ、何度も何度も山頂を洗って北西の壁をかけ下り、反対側の鉢伏山にも風が吹き荒れているようだ。怪しい雲行きに急がねばと、リュックを背負う。粘土質の滑りやすい地面は、今はまだ乾いていて滑る心配はない。

頂上まであと100m。しかし、厚みを増した雲に覆われる山頂は、間近に見えるはずの頂上小屋もみあたらない。そのときだ!パラパラッ・・頬や肩を打つ雨。やばいやばい、先を急ぎかけたが、歩みを止めた。(この粘土質の土が濡れれば確実に滑る。帰りの6kmを考えると、さらに慎重さを求められる。

リュックから雨具のポンチョを出してリュックごと、上からかぶる。今日は撤退だ。

たった100m、あと100mなのに、後ろ髪を引かれる思いだったが、下り始めた。しばらく下ると、単独の女性登山者とすれ違った。そのとき雨はやんでいたが、僕の真っ黄色のポンチョは言わずもがな(上は雨です)ということで、あいさつを交わしただけですれ違った。(多くの女性単独登山者には声をかけにくい、警戒感が半端ない感じがする。単独行者でなければ、ほぼみんな明るく気さくなのだが)避難小屋まで降りてきたとき、ご夫婦の登山者と言葉を交わしたが、やはり天候が気になるようで。雨がぱらついて、風が強いことをお伝えして、(お気をつけてと)あいさつを交わして下山をする。

振り返った。何度も振り返った。ああっ!山頂が見えている、晴れ間も出てきた。決断が早かったのか!残念だ、本当に残念だ。

中原中也の汚れちまった悲しみに・・ではないが、登れなかった悲しみに今日も風さえ吹きすぎる、のような気持である。登山口近くのスキー場にはまだ出始めの紫のススキが風に揺れ、秋がもうすぐだと僕に教えてくれる。ちくしょうっ、温泉でも入って帰るか!